『トライアングル』にみる「悪」
結局、犯人は、丸山だった。
そして、事件の動機には、「妹」が持ち出される。
つまり、彼もある意味では、被害者である。
そのため、この事件は、「正義」対「正義」であったことが明らかになる。
しかし、丸山の「正義」は、手段として、「悪」を用いてしまった。
そして、それが、「弱さ」になる。
丸山の執拗な郷田に対する執着(結果的に、彼の家族三人、違う二人を殺してしまうことになる)は、自分と似た境遇にいるが故に生じているのではないだろうか。
しかし、最後に、郷田は、丸山を殺さない。これが、「強さ」なのではないだろうか。
物語は、それぞれが、これからは、「自分の人生」を生きていくことを強調して終わる。
しかし、自分の「正義」が正しいかはわからない。場合によっては、誰かから何かを奪ってしまうことがある。そのため、奪われることだってありうる。
そこで、「自分の人生」を生きられるのは、「強い」もの、過去を受け入れて生きていけるものである。
偶有可能性を捨てきれないが故に、過去を変えようと人はする。しかし、過去は変えられない。自分が受け入れていくしかないのである。